猫の文明

私には、どうも趣味人の面とコレクターの面があります。
最初は面白がって買い集めだすのですが、いつの間にやら面白いより集めることに目的が入れ替わっていることが多々ある。
研究には両方とも必要な要素でもありますが、当初の目的を忘れる恐れもあります。


プログレもそうでした。曲の複雑さに惹かれて買っていくうちに、そのグループの聞いたことのないアルバムを買わなくてはいけない気になり、そのうちまだ知らないグループがいることを知り、彼らも聞かなければならない気になり・・・


ディック・ブルーナもそうです。幼い頃は絵柄が好きでもグッズがなかったのが、ここ数年いろんな商品が発売され、最初のうちは喜んで買っていたのが、だんだんコンプリートしなければならなくなり・・・


赤瀬川原平さんもそうです。
トマソン」を知り、「宮武外骨」を知り、その面白さに著作を集めだし、氏がかつて行っていた60年代の芸術活動にも興味をもち。そこまではよかったのですが、多作な氏の著作をすべて集めなくてはいけない気がしてきて集めていたのですが。
このごろ、つまんなくなっちゃったんですよね・・・買ってもなかなか読めなくなったし。
自分の中でブームが去ったのではないか・・・と少々寂しく思っていたところでした。
『猫の文明』が書店で並んでいたのは知っていました。
でも他に読まなければいけない本があるし、もうそろそろ読まなくなってきたし・・・
と思っていたのですが、なんか研究書を読むのに疲れたな、と今日ふと思い、書店に寄ったら目についた。
で、ついつい買ってしまいました。
気分を変えたら論文もまた読めるだろうと軽く考えただけだったのですが。
・・・おもしろい。
氏が町で出会った猫や犬の写真を元にしたエッセー集と言いますか。
それもただのメッセージではなく、それぞれの写真を「お茶会」に見立てているのですが。
その姿勢がすばらしい。
擬人化するでもなく、入れ込むわけでもなく。猫は猫として、犬は犬として、でも彼らなりにどう考えているのかを推測し。
被写体とカメラマンの緊張関係がいいですよね。
ちょうどいい距離感。
ああ、私はこういうのが好きだったんだっけなあ、となんか目が覚めました。


今日はいまさらながら、新宿区下落合の自性院へ行って見ました。
秘仏・猫地蔵。
残念ながら、公開は昨日の節分。
来年は見に行くかもしれません。