日経スポーツより

茨城県内で半鐘7個以上盗難

 茨城県内で最近、火の見やぐらなどに設置されていた消防用の半鐘(はんしょう)が少なくとも7個、相次いで盗まれていたことが17日、分かった。江戸時代から使われていた由緒あるものも被害に遭っており、管理していた住民は「昔から有事の際、集落を守ってきた、2つとない宝物だったのに」と激怒。約80キロの重さのものまで持ち去られており、県警では、何者かが素材の銅を転売する目的で盗んだ可能性があるとみている。

 常総署によると、17日午前7時ごろ、常総市左平太新田の火の見やぐら(高さ約7メートル)から青銅製の半鐘(高さ約40センチ、直径約30センチ、重さ約8キロ)がなくなっているのに、同地区自治会長の吉田信雄さん(73)が気付いた。やぐらは、コンクリート製の柱2本と鉄製のはしごなどでできており、上部にある金属製のフックに半鐘が溶接されていたという。

 吉田さんは「約3年前にも1回盗まれたので、その後、見つかった際、持ち去られないようにフック部分と半鐘を溶接した。人間の力では取れないはずなので、工具などで切ったと思われる」と分析する。

 吉田さんによると、この半鐘は8代将軍徳川吉宗(在位1716〜1745)が統治したころから使われている由緒あるものという。「古くから、水害など有事の際使われてきた、集落のよりどころであり、貴重な歴史的宝物だった。価値を金額では表せない、2つとないものなのに、憤りを感じる」と話した。

 同署によると、常総市内では、ほかにも2件、火の見やぐらの半鐘が盗まれている。今月11日には同市本豊田で約20キロのものが、同15日には同市舘方で高さ約1メートル、直径約80センチ、重さ約80キロの巨大なものがなくなっていることが判明した。

 このほか、茨城県西部では最近、半鐘が4件連続して盗まれている。最初は昨年11月ごろ、常総市に隣接する下妻市北部で被害が発覚。今月16日には、つくば市花室で青銅製の重さ約50キロのものが、筑西市下中山で鉄製の10万円相当のものが無くなっているのが分かった。17日にも下妻市樋橋で、約20キロの銅製の半鐘が盗まれているのが判明した。

 中国で需要が高まっていることなどから、最近銅などの金属価格が高騰している。県警では、半鐘の素材の銅を転売して稼ぐ目的で犯行に及んだ可能性があるとみるとともに、まだ判明していない被害がある可能性もあるとみて、捜査を進めている。

[2007年2月18日8時55分 紙面から]

http://www.nikkansports.com/general/p-gn-tp0-20070218-158259.html


興味深い事件です。
というか、事件そのものではなく、事件がもたらした反応が、というべきか。
火の見櫓というのは、現在において機能しているとは思えない状況です。
かつてはおそらく、火事を知らせるには半鐘を鳴らすしかなかったのでしょう。
ですが、現在においては、火事が起こっているときに、火の見櫓に登っている時間があるならば、その分早く119番通報して村の有線放送を流したほうがいいように思えます。
そんな現在において、火の見櫓の存在意義は、無いに等しいと考えられます。
地区の中で火の見櫓が住民のアイデンティティや誇りの源になっている、という地域は、ほとんどないのではないでしょうか?
中にはあるのかもしれませんが、大体において、火の見櫓が現存しているのは「壊すまでもないから」であって、鉄柱が錆びたら「直すより壊す」方が経済的だと判断されることが大方ではないかと思われます。
そういう意味で、火の見櫓はトマソンに近いのかもしれない。
で、恐らく日常省みることもない火の見櫓の半鐘が盗まれて、ある住民は怒りを露にしています。
この地域ではどうやらいわれがある半鐘だったらしく、それなりの説話があるようですが、ほかの地域ではどうか。
「無くしてみて初めて惜しくなる」というところでしょうか。
最近銅製品の盗難が続いていますが、それらと今回の盗難とは、盗まれた物の立ち位置という面で意味合いが異なるように思えます。